
寒くなると、体のあちこちに不調が出てきます。
冷えた道での転倒、こわばった腰の痛み、上がりやすくなる血圧——。
冬は、大人世代にとって、体調管理がとくに難しい季節です。
しかも、これらは「たかが」と見過ごせないもの。
転倒による骨折、血圧の急変による脳卒中や心筋梗塞など、命に関わる事態につながることもあります。
けれど、冬の不調の多くは、「冷え」という共通の原因から来ています。
体を冷やさない工夫を中心に対策すれば、転倒も、腰痛も、血圧の変動も、ぐっと防ぎやすくなります。
この記事では、冬に増える転倒・腰痛・血圧のトラブルについて、原因と対策を、網羅的にお伝えします。
寒い季節を、元気に、安全に越しましょう。
冬にからだの不調が増える理由
冬に体調を崩しやすいのは、主に寒さと冷えが原因です。
寒くなると、体は熱を逃がさないよう、血管を縮めます。
すると血圧が上がりやすくなります。
また、寒さで筋肉がこわばり、動きがかたくなって、腰痛や関節痛、転倒が起こりやすくなります。
厚着で体が動かしにくいこと、日が短く運動不足になりがちなこと、路面が凍結することも、冬のリスクを高めます。
つまり、冬の不調は、「冷え」を軸につながっているのです。
だからこそ、体を温め、冷やさない工夫が、あらゆる不調の予防の土台になります。
転倒を防ぐ
冬は、一年でもっとも転倒が起こりやすい季節です。厚着で動きにくく、冷えで筋肉がこわばり、路面が凍る
——条件がそろっています。
転倒による骨折は、寝たきりのきっかけにもなる、こわい事故です。
屋外での転倒対策
- 凍結した路面に注意:とくに朝晩、日陰、橋の上、マンホールの上は滑りやすい。小さな歩幅で、ゆっくり歩く
- 滑りにくい靴を:靴底に滑り止めのあるものを。すり減った靴は危険です
- 手をふさがない:両手が使える状態に。ポケットに手を入れて歩くのは危険です
屋内での転倒対策
- 段差・床のものを片づける:家の中の転倒は少なくありません。つまずきのもとをなくす
- 手すり・足元灯を:階段、廊下、トイレに。夜間の移動を安全に
- 体を温めてから動く:起き抜けや、寒い場所での急な動作は、こわばった筋肉を痛めやすい。少し体を動かし、温めてから
体を温め、筋肉をほぐしておくことが、転倒予防にもつながります。
血圧の変動に気をつける
寒さは、血圧を大きく変動させます。急な温度差で血圧が乱高下すると、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まります。
とくに気をつけたいのが、次の場面です。
- 入浴時(ヒートショック):暖かい部屋から寒い脱衣所・浴室へ、そして熱いお湯へ。
この温度差が血圧を急変させます。脱衣所や浴室を暖め、湯温は41℃以下、かけ湯で体を慣らしてから入りましょう - トイレ:寒いトイレでのいきみも血圧を上げます。暖房便座などで寒さをやわらげて
- 起床時:朝、暖かい布団から寒い部屋へ出るときも要注意。起きたらすぐ動かず、体を慣らして
日ごろの血圧管理も大切
- 家庭で血圧を測る:毎日決まった時間に測り、変化に気づく。かかりつけ医に相談する材料にもなります
- 減塩を心がける:塩分のとりすぎは血圧を上げます。出汁のうまみを生かした薄味を
- 薬は自己判断でやめない:血圧の薬を飲んでいる方は、勝手に中断せず、必ず医師に相談を
- 温度差を減らす:家全体をなるべく暖かく保ち、寒い場所をつくらない
血圧が高めの方、心臓や血管に不安のある方は、とくに冬の温度差に注意してください。
腰痛・関節痛をやわらげる

冬は、腰痛や膝の痛みなど、関節・筋肉の不調も増えます。
寒さで血のめぐりが悪くなり、筋肉がこわばるためです。
- 体を温める:腰やお腹、関節を冷やさないように。
腹巻き、カイロ、ひざかけを活用。入浴でしっかり温まるのも効果的です - 軽いストレッチを:朝や、動く前に、無理のない範囲で体をほぐす。こわばった筋肉を急に使うと痛めます
- 正しい姿勢を:重いものを持つときは、腰だけでなく膝を使う。前かがみの無理な姿勢を避ける
- 適度に動く:寒いからと動かないでいると、かえって筋肉が固まり、痛みが増します。
無理のない範囲で体を動かしましょう
痛みが強い、長く続く、しびれを伴う場合は、がまんせず整形外科やかかりつけ医に相談を。
すべての土台は「冷え対策」
転倒も、血圧も、腰痛も、根っこには「冷え」があります。
だからこそ、体を冷やさないことが、冬の健康を守る最大のポイントです。
- 上手に重ね着する:脱ぎ着で調節できる重ね着を。空気の層が暖かさを保ちます
- 「三つの首」を温める:首・手首・足首を温めると、効率よく全身が温まります。マフラー、手袋、レッグウォーマーを
- 入浴で芯から温める:シャワーだけでなく、ぬるめのお湯にゆっくりつかると、血行がよくなり、冷えも痛みもやわらぎます
- 体を動かして熱をつくる:適度な運動は、体の中から熱を生み、血のめぐりをよくします
- 温かいものを食べる:体を温める食事も冷え対策に。しっかり食べて、栄養と熱を
冷えを防ぐことは、転倒・血圧・腰痛のすべてに効く、いちばんの近道です。
冬の感染症と、からだの守り
冬は、かぜやインフルエンザ、その他の感染症が流行する季節でもあります。
感染症は、それ自体つらいだけでなく、体力を奪い、持病を悪化させ、寝込むことで筋力低下や体調不良を招く
——冬の不調の連鎖のきっかけにもなります。
- 手洗い・うがいを習慣に:基本ですが、いちばん効果的な予防策です
- 室内の湿度を保つ:乾燥すると、のどや鼻の防御力が落ち、ウイルスも活発になります。加湿で40〜60%を目安に
- 予防接種を検討する:インフルエンザなどの予防接種について、かかりつけ医に相談を
- 人混みでの対策:体調に応じて、マスクや、こまめな手指の清潔を
- 栄養と睡眠で抵抗力を:バランスのよい食事と十分な睡眠が、体の防御力を支えます
「たかがかぜ」とあなどらず、冬はいつも以上に、体を守る意識を持ちましょう。
体調を崩して寝込むと、そこから転倒・筋力低下・持病の悪化と、悪い連鎖が始まりかねません。
冬の運動を、安全に行うコツ
冬でも運動は大切ですが、寒い季節ならではの注意点があります。
安全に体を動かすために、次の点を心がけましょう。
- 準備運動をしっかり:冷えてこわばった筋肉を、いきなり動かすと痛めます。軽くほぐしてから
- 暖かい服装・時間帯を選ぶ:屋外なら、日中の暖かい時間に。重ね着で調節できるように
- 朝いちばんの激しい運動は避ける:起床直後は血圧が上がりやすい時間。体を慣らしてから
- 室内でできる運動も用意:路面が凍る日や寒すぎる日は、無理せず室内で足踏みやストレッチを
- 水分補給を忘れずに:冬も汗をかき、脱水になります。運動の前後に水分を
寒いからと動かないでいると、筋力が落ち、血のめぐりも悪くなります。
「暖めて、安全に、無理なく動く」を心がけて、冬も体を動かし続けましょう。
冬の運動と食事
寒いと動かなくなりがちですが、適度に動くことが、筋力を保ち、血行をよくし、冷えを防ぎます。
屋外が寒い日は、室内での足踏みやストレッチ、暖かい時間帯の散歩を。
無理のない範囲で、体を動かし続けましょう。
食事は、体を温め、栄養をしっかりとることを意識して。
たんぱく質で筋肉を保ち、いろいろな食品でバランスよく。
温かい汁物は、体を温めながら水分もとれて一石二鳥です。
冬は水分をとるのを忘れがちですが、脱水は血圧や血栓のリスクにも関わるので、こまめな水分補給も忘れずに。
冬の「かくれ脱水」に注意
冬は汗をかかないため、水分補給を忘れがちです。
でも、冬にも脱水は起こります。暖房の効いた乾いた部屋では、気づかないうちに体から水分が失われていきます。
これを「かくれ脱水」と呼びます。
脱水は、のどの渇きだけの問題ではありません。
血液が濃くなり、血栓(血のかたまり)ができやすくなることで、脳梗塞や心筋梗塞のリスクにも関わります。
冬の血圧トラブルとも無関係ではないのです。
- のどが渇く前に、こまめに水分を:冬も意識して水分補給を。温かいお茶やスープでもかまいません
- 入浴の前後に一杯:入浴で汗をかくので、前後の水分補給を習慣に
- 就寝前と起床時に:寝ている間も水分は失われます。枕元に飲み物を置いておくのも一案
「冬は水分をとらなくていい」は誤解です。
冬こそ、意識して水分をとりましょう。
冬は、心も冷えやすい
冬に気をつけたいのは、体だけではありません。
心の不調も、冬に起こりやすくなります。
日照時間が短くなると、気分が落ち込んだり、やる気が出なかったりしやすくなる
——いわゆる「冬季うつ」と呼ばれる状態です。
- 朝の光を浴びる:起きたらカーテンを開け、日の光を浴びる。生活リズムと気分を整える助けになります
- 体を動かす:適度な運動は、気分を明るくする効果も期待できます
- 人とつながる:寒いと外出がおっくうになり、閉じこもりがちに。
電話や、あたたかい日の外出で、人とのつながりを保ちましょう - 無理をしない:気分が沈む日は、がんばりすぎず休むことも大切です
気分の落ち込みが強く、長く続く、日常生活に支障が出るような場合は、一人で抱えず、かかりつけ医や専門の窓口に相談を。
体の冷えと同じように、心の冷えにも、あたたかいケアを。
冬の食事で、からだを内側から守る
冬の不調を防ぐには、外からの防寒だけでなく、食事で体を内側から温め、守ることも大切です。
- 温かい汁物を食卓に:みそ汁、鍋、スープは、体を温めながら、野菜やたんぱく質、水分もとれる万能メニュー。冬の食卓の強い味方です
- たんぱく質で筋肉と体温を保つ:肉・魚・卵・大豆をしっかり。筋肉は体を支え、熱もつくります
- 体を温める食材を取り入れる:しょうが、根菜類など、体を温めるとされる食材を献立に
- 減塩を意識する:冬は鍋物や汁物で塩分をとりすぎがち。血圧のためにも、出汁のうまみを生かした薄味を心がけて
- 水分も忘れずに:温かいお茶やスープでもかまいません。冬のかくれ脱水を防ぎましょう
「しっかり食べて、体を温め、栄養で守る」。
冬の食事は、寒さと不調から体を守る、大切な習慣です。
よくある質問(Q&A)
Q. 冬は血圧が上がります。どうすれば?
A. 温度差を減らす(家を暖かく、入浴やトイレの寒さ対策)、減塩、家庭での血圧測定が基本です。
薬を飲んでいる方は自己判断で中断せず、かかりつけ医に相談を。
急に大きく上がる、頭痛やめまいを伴うときは受診を。
Q. 朝、腰が痛くて動けません。
A. 寝ている間に冷えて筋肉がこわばっているのかもしれません。
急に動かず、布団の中で軽く体をほぐし、温めてから起きましょう。
痛みが続く・強い・しびれを伴う場合は、整形外科に相談を。
Q. 雪や氷の日、外出はどうすれば?
A. 無理な外出は避けるのが第一です。
出かけるなら、滑りにくい靴、小さな歩幅、両手を空ける、明るい時間帯を選ぶ、といった工夫を。
Q. 入浴中に気をつけることは?
A. 脱衣所と浴室を暖めて温度差を減らす、湯温は41℃以下、いきなり湯船に入らずかけ湯で体を慣らす、長湯を避ける、入浴前後に水分をとる、家族に声をかけておく
——この6つが基本です。食後すぐや飲酒後の入浴も避けましょう。
Q. 手足の冷えがつらいです。
A. 「三つの首(首・手首・足首)」を温めると効率よく全身が温まります。
入浴で芯から温め、適度に体を動かして血のめぐりをよくすることも効果的です。
冷えがひどい、しびれを伴う場合は、かかりつけ医に相談を。
冷えを防いで、元気に冬を越す
冬に増える転倒・血圧の変動・腰痛は、いずれも「冷え」という共通の原因から来ています。
だからこそ、体を冷やさないこと
——重ね着、三つの首を温める、入浴で芯から温める、適度に動く——
が、すべての不調を防ぐ土台になります。
そのうえで、凍結路面での転倒に注意し、入浴やトイレの温度差でヒートショックを防ぎ、血圧を日ごろから管理し、腰や関節を冷やさず動かす。
どれも、今日からできる備えです。
寒い季節は、体が縮こまりがちですが、温めて、無理のない範囲で動かすことが、元気に冬を越すコツです。
まずは今日、首・手首・足首を温めることと、入浴で芯から温まることから、始めてみませんか。
<参照>
政府広報オンライン「冬の健康・ヒートショック・転倒予防」
https://www.gov-online.go.jp/
健康長寿ネット(長寿科学振興財団)「高齢者の入浴事故 ヒートショック対策と予防」(温度差・血圧)
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/koureisha-sumai/koreisha-hitoshokkutaisakutoyobo.html
日本高血圧学会「家庭血圧の測定・冬の血圧管理」
https://www.jpnsh.jp/general.html




