エンタメ

【前編】世代を超えた夢のリレー——脚本家・徳永友一が語る、サバ缶が宇宙へ飛ぶまでの物語

 数々の名作を生み出してきた“月9”枠で、15年ぶりとなる学園ドラマがまもなく放送開始! 舞台は福井・小浜。水産高校の生徒たちが、手作りのサバ缶を宇宙食に進化させ宇宙へ届けようと奮闘する実話をもとにしたオリジナル作品です。

 脚本を手がけたのは、映画『はたらく細胞』、映画『翔んで埼玉』シリーズ、『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』、『ルパンの娘』シリーズなど、多くのヒット作を送り出してきた徳永友一さん。今年で脚本家生活20年、50歳の節目を迎える徳永さんが「即答で引き受けた」と語るこの企画。

 前編では、企画との出会いから、主人公・朝野先生のキャラクター造形、取材エピソードまでをたっぷり聞きました。

オファーを即答で引き受けた

——オファーが来た時の第一印象を教えてください。

「去年の秋頃、プロデューサーから『月9でこういう企画がある。福井県の水産高校の生徒たちが、“宇宙食開発”という大きな夢に挑戦した実話をもとにしたオリジナルドラマを一緒に作りませんか?』と声をかけてもらって。映画や配信に軸足を移していた時期だったので、企画の全容を聞くまでは、正直聞くだけ聞いてお断りしようかと思っていました」

——それでも即答で引き受けたのはなぜですか?

「長年にわたる宇宙食開発プロジェクトのバトンが、前の代から次の代へ渡っていくという構造が面白かった。これは連続ドラマでしか描けない話だなと思って。映画では難しい。それと、何かしらのバトンを引き継いでいく物語というのは、僕自身がここ最近ずっとテーマとして持っていたものだったのでドンピシャで重なり、その日のうちに『やります』と即答しました。北村匠海さんとお仕事をさせていただきたいと思っていたので、それも引き受けた要因の大きな一つです」

登場人物が3年ごとにリセット?

——長年の時間軸を描くうえで、まず直面した壁は何でしたか?

「作り上げた先生と生徒たちの関係性を、一度リセットしなければならないことです。(高校生活の)3年ごとに生徒が入れ替わっていくから、愛着が湧いた頃に卒業してしまう。やったことがない構造で、最初は本当に頭を抱えました(笑)」

——先生自身の成長を描くのも難しそうですね。

「序盤はまだ教師として未熟なのでたどたどしい話し方にしていても、中盤過ぎくらいになると数年が経過している設定なので、同じ感覚でセリフを書いてしまったら『この先生、全然成長してないじゃないか』となってしまう。なので、物語の中盤以降は、少し俯瞰して物事を見るような言葉を選ぶようにしたり、そういう細かいところに気を使いながら書いています。長い年月の物語なんて、やったことがなかったから本当に難しい。でも、そこが面白くもあります」

主人公は「答えを言わない先生」

——北村匠海さんが演じる朝野先生は、どんな人物として描いていますか?

「一言で言えば『未熟な教師』です。海が好きで水産系の大学を出て、軽い気持ちで水産高校に赴任してきた人。生徒と一緒になって悩んだり、むきになったりする人間くさい先生で、友達みたいな感覚で接してくれる。でも、それがいいと思っているんです。何かを教えようとしているわけじゃなくて、一緒に悩んでくれる。そういう先生って、今の時代に必要な気がしています」

——一方、先生としてのポリシーがありますよね。

「『生徒が自分から声を出すまで、自分から”やろう”とは言わない』ということ。生徒がやりたいと言うまで我慢して、声を上げてから初めて一緒に動く。自分から『さあ、宇宙に飛ばそう』とは絶対に言わないんです。実際に宇宙食を開発した高校生たちと向き合ってきた実在の先生の姿勢を参考にしましたが、ドラマ上は赴任当初からそう思っていたわけではなく1話の中のある出来事からそのポリシーが生まれたという設定にしてあります」

——それは脚本的にはかなり難しくないですか?

「難しいです。主人公なのに物語を動かさない、でもドラマなのだから何かしら生徒に影響を与えなきゃいけない。どう作るんだ、このドラマって(笑)。そこを乗り越えてこそ、新しい教師像が生まれるんじゃないかと。生徒の主体性を引き出そうとする先生は、今の時代らしいと思います。昔の学園ドラマみたいに先生が引っ張っていくのとは違う。視聴者の方にも“こういう先生いいな”と思っていただけたらうれしいです」

印象的だったマーメイドの銅像と先生からの一言

(C)フジテレビ

——現地・小浜での取材はいかがでしたか?

「全話の構成を作り書き始める前に一度足を運びました。実際撮影をするであろう場所を見ていると、書く時にイメージしやすくて。監督と『ここで撮るならこうかな』という話をしたりしながら町中を歩き回ったことが、その後の台本作りに活かされています」

——現地で何か発見はありましたか?

「マーメイドの銅像を見つけたのが、いちばんの収穫でしたね(笑)。シュールな銅像が個人的にとても気に入っていてドラマに出そうと密かに思っていました。ドラマの中で何度か登場するので、注目してみてください。現地取材を終えた後、実際に高校生たちと向き合ってきた小坂(康之)先生からプロデューサーにドラマ化の承諾の報告があり、『いいドラマにしてください』という一言をいただきました。その時はじんとしました。10年以上かけて続いてきたプロジェクトのバトンが、今度は自分に渡ってきたんだ、と。脚本家として、そのバトンを今度は視聴者の皆様に届ける番なのだ、と、気が引き締まりました」

大人世代に届けたいメッセージは後編へ

世代を超えて挑み続けた長い時間の重みを連続ドラマの中に圧縮し、キャラクターを育てながらリセットし、また育て直す。そんな難題に挑んだ徳永さんが、「面白そうだから即答した」と語る姿が印象的でした。夢をつないでいく物語のテーマは、人生のさまざまな場面で何かを引き継いできた私たちにも、きっと深く刺さるはずです。

 後編では、今、学園ドラマを制作する意味や、すべての世代に向けた熱いメッセージをお届けします。どうぞお楽しみに!

徳永 友一

1976年生まれ、神奈川県出身。獨協大学法学部法律学科卒業後、総合人材サービス会社に7年間勤務。 その傍ら脚本を学び、2005年、フジテレビ系ドラマ『電車男』第6話で地上波デビュー。以来、コメディ、サスペンス、ホームドラマとジャンルを問わず多数の作品を手がける。

2019年より映画界にも進出。同年、映画初作品となる『翔んで埼玉』で第43回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。その後も『かぐや様は告らせたい』『はたらく細胞』など話題作の脚本を次々と担当。スピード感ある構成とコメディを得意とし、キャラクター作りを創作の核に置く。 日本脚本家連盟スクールでは、講師も務めている。

番組情報

■タイトル
『サバ缶、宇宙へ行く』
■放送日
4月13日スタート
毎週月曜 21時~21時54分
■出演
北村匠海 出口夏希 黒崎煌代 ・ 八嶋智人 三宅弘城 村川絵梨 ソニン 迫田孝也 鈴木浩介  荒川良々 / 神木隆之介 他
語り 井上芳雄
■原案
『さばの缶づめ、宇宙へいく』(小坂康之、林公代/イースト・プレス)
■脚本
徳永友一
(映画『はたらく細胞』、映画『翔んで埼玉』シリーズ、『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』、『ルパンの娘』シリーズ、他)
■音楽
眞鍋昭大
(『嘘解きレトリック』、『PICU 小児集中治療室』、他)
■スタッフ

<演出>
鈴木雅之
(『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』、『ラジエーションハウス』シリーズ、『HERO』シリーズ、他)
西岡和宏
(『新東京水上警察』、『続・続・最後から二番目の恋』、『風間公親 教場0』、他)
髙橋洋人(オフィスクレッシェンド)
(『ホンノウスイッチ』、映画『おとななじみ』、他)
<プロデュース>
石井浩二
(『それでも、生きてゆく』、『若者たち2014』、他)
<プロデューサー>
野田悠介
(『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』、『新宿野戦病院』、『ナイト・ドクター』、他)
中沢 晋(オフィスクレッシェンド)
(『119エマージェンシーコール』、『マルス―ゼロの革命―』、他)
■制作協力
オフィスクレッシェンド
■制作著作
フジテレビジョン
【公式HP】https://www.fujitv.co.jp/sabauchu
【公式X】https://x.com/sabauchu_fujitv
【公式Instagram】https://www.instagram.com/sabauchu_fujitv/
【公式TikTok】https://www.tiktok.com/@sabauchu_fujitv