
家族とお金の話をするのは、気が重い。
財産を当てにされているようで嫌だ。心配をかけたくない。
——理由はさまざまですが、多くの家庭で、この話題は先送りにされています。
でも、いざというとき困るのは、金額を知らないことではなく、「どこにあるか」を知らないことです。
だから、最初の一歩は「置き場所」から。
金額は、まだ言わなくていい。
この順番なら、驚くほど話しやすくなります。
第1段階:ありかを1枚の紙に書く
まず、自分ひとりでできる作業です。A4の紙に、「何が、どこにあるか」だけを書く。
- 銀行口座(銀行名・支店名のみ。残高は書かない)
- 証券口座・保険証券(会社名と、証券の保管場所)
- 年金手帳・マイナンバーカードの場所
- 不動産の権利証の場所
- 借入がある場合は、その存在(金額は書かなくていい)
金額を書かないから、書けるのです。
この紙を、金庫でも引き出しでもいい、1か所にまとめて、家族に「ここにある」とだけ伝える。
これで、第1段階は完了です。
第2段階:「もしも」を軽く切り出す
次は、会話です。切り出し方には、コツがあります。
自分の話からではなく、他人の話から。
「〇〇さんのご主人が入院したとき、通帳の場所がわからなくて大変だったんだって」
そして、こう続けます。
「うちは、まとめて引き出しに入れてあるからね」
——これだけで、伝えるべきことは伝わっています。
深刻な相談にする必要は、まったくありません。
第3段階:金額は「相談が必要になったとき」に

金額の共有は、必要になったときで十分です。
それが必要になるのは、介護が始まるとき、相続を考えるとき、施設を検討するとき。
そのときに初めて、具体的な数字が要ります。
「今は言わない」と決めておくのも、立派な方針です。
大事なのは、必要になったら、誰に、何を見せるかが決まっていること。
話す場所は食卓ではなく車の中
「もしも」の話は、改まった席ほど、うまくいきません。
車の中、散歩の途中、片づけをしながら。
目を合わせない場面のほうが、こういう話は出やすいものです。
1回で終わらせず、思い出したときに、また少し。
「自分が『価値がある』と感じたものだけを買うようにしている」
というお声のように、お金は、価値観の話でもあります。
何にお金を使いたいかを語ることは、自分を語ることでもあるのです。
今日は紙を1枚書いてみる
具体的な提案です。
今日、A4の紙を1枚出して、「口座のある銀行名」「保険会社名」「証券の保管場所」を書いてください。
金額はいりません。10分で終わります。
そして、その紙を引き出しに入れて、家族に一言。
「ここにあるからね」。
——それだけで、あなたの家の「もしも」は、ずいぶん軽くなります。
金額より先にありかを
お金の話は、身構えるほど遠くなります。
まずは1枚の紙から始めてみませんか。
<参照>
「生き方に関する読者アンケート」(読者の声)
金融庁「事前の備え(金融資産の管理・見える化)」(資産の把握と家族との共有)
https://www.fsa.go.jp/policy/kouhou/index.html
厚生労働省「『人生会議』してみませんか」(もしものときに備えた話し合いの進め方)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02783.html




