
年齢を重ねても、感情に振り回される日はあります。
ささいなことでイライラしたり、理由もなく落ち込んだり、不安が頭を離れなかったり。
そんなとき、「もう大人なのに」と、自分を責めてしまうこともあるかもしれません。
でも、感情は、なくすべき「弱さ」ではありません。
心理学の視点から見ると、感情は、自分の心が発している「お知らせ」です。
その仕組みを少し知るだけで、感情との付き合い方は、ずっと楽になります。
感情は「敵」ではなく「知らせ」
まず、大切な考え方を一つ。
感情そのものに、良いも悪いもありません。
怒り、悲しみ、不安。こうした感情は、不快だからと「悪いもの」とされがちです。
けれど、心理学では、すべての感情には役割があると考えます。
怒りは「大切なものが傷つけられた」という知らせ。
不安は「備えが必要かもしれない」という知らせ。
悲しみは「何かを失った」という心の反応です。
つまり、感情は、あなたに何かを伝えようとしているメッセンジャーです。
「なぜ今、この気持ちが湧いたのだろう」と、その知らせの中身に耳を傾ける。
感情を敵視して抑え込むより、その声を聞いてあげるほうが、心は落ち着きます。
「名前をつける」だけで、心が落ち着く
感情に振り回されないための、シンプルで効果的な方法があります。
それは、今の気持ちに、言葉で名前をつけること。
「なんだかモヤモヤする」を、「これは“不安”だ」「これは“がっかり”だ」と、はっきり言葉にしてみる。
すると不思議なことに、渦巻いていた気持ちが、少し落ち着いてきます。
正体のわからない感情は大きく感じられますが、名前がつくと「扱えるもの」になるのです。
紙に書き出すと、さらに効果的です。
「何に、どんな気持ちになったか」を書くうちに、自分の心が客観的に見えてきます。
認知行動療法でも、こうして気持ちを記録し、見つめ直す方法が使われています。
怒りとの付き合い方——「6秒」の知恵

強い感情の代表が、怒りです。
ここには、よく知られた知恵があります。
「6秒、待つ」。
怒りの衝動のピークは、長くは続かないと言われます。
カッとなった瞬間に言い返したり、行動に移したりせず、まず数秒、間を置く。
頭の中で数を数える、ゆっくり深呼吸を数回する、コップの水を一口飲む。
そのわずかな時間が、後悔する言動を防いでくれます。
そして、少し落ち着いたら、「自分は何に、これほど怒ったのか」を振り返ってみる。
怒りの奥には、たいてい「大切にしているもの」が隠れています。
それを知ることは、自分自身を深く理解することにつながります。
感情を知ることは、自分を知ること
感情を読み解く力は、自分自身と、うまく付き合う力です。
感情を敵として抑え込むのではなく、その知らせに耳を傾け、名前をつけ、少し間を置く。
それだけで、心はずいぶん穏やかになります。
そして、「自分はどんなときに、どう感じるのか」を知っていくことは、自己理解を深め、自分をいたわることでもあります。
今日、心が揺れたら、まずはそっと、その気持ちに名前をつけてみてください。
それが、自分と仲良くなる第一歩です。
<参照>
厚生労働省「こころの耳」(ストレス・感情との向き合い方、認知行動療法)
https://kokoro.mhlw.go.jp/
一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会(怒りのピークと「6秒」の考え方)
https://www.angermanagement.co.jp/


