
暑いから、今年の夏はどこにも行かない。
——そう決めてしまう前に、一つだけお伝えしたいことがあります。
熱中症で救急搬送された人がいちばん多かった場所は、じつは屋外ではなく「住居」(38.1%)でした。
2025年の5月から9月までの搬送者は10万510人と、統計を取り始めてから最も多い数字。
がまんして家にこもることは、必ずしも安全策ではないのです。
だとしたら、選ぶべきは「涼しいところへ、上手に移動する」旅。
夏の旅は、行き先の名前ではなく、標高と時間帯という2つのつまみで設計します。
つまみ1:標高を1,000m上げる
気温は、標高が100m上がるごとに、およそ0.6℃下がるとされています。
単純計算で、標高1,000mの高原は、平地より6℃前後涼しい。
これは、なかなかの魔法です。平地が34℃の日、高原は28℃前後。
日陰に入れば、風がすっと通ります。
日本には、この標高帯にある宿泊地がたくさんあります。
高原の宿、湖畔の町、渓谷沿いの温泉地。
「避暑地」と呼ばれてきた場所は、たいていこの高さにある
——そう思って地図を眺めると、行き先の選び方がぐっと具体的になります。
宿を探すときは、施設名より先に「標高」で検索してみてください。
土地の名前+標高、で数字はすぐ出てきます。
つまみ2:11時から15時は動かない
もう一つが、時間割です。
夏の旅は、行程を「動く時間」と「動かない時間」にはっきり分けます。
- 朝7時〜10時:散歩、市場、寺社、湖畔。いちばん気持ちのいい時間帯です
- 11時〜15時:美術館、水族館、資料館、喫茶店、宿の部屋。屋内で過ごす、と最初から決めておく
- 16時〜18時:夕方の街歩き、川辺、温泉。日が傾いてからが本番です
この時間割の何がいいかというと、「もったいない」という気持ちが消えることです。
昼間に屋内で休むのは、サボりではなく、旅の設計。
予定表に「13:00 美術館(涼む)」と書いてしまえば、堂々と座っていられます。
「長期休暇をとれるのが夏なので、行き先によっては、熱中症が心配」
この心配は、時間割ひとつで、ずいぶん小さくなります。
一泊二日の組み立て例

たとえば、こんな二日間はいかがでしょう。
1日目
昼前に出発し、移動そのものを「涼む時間」に充てる。
列車なら車窓、車なら休憩をこまめに。15時ごろ宿に着き、まずは部屋で休む。
17時から、宿のまわりを1時間だけ散歩。
日が長い季節だからこそ、夕方の光がきれいです。
2日目
思い切って6時起き。
朝の高原は、空気の温度がまるで違います。
7時から9時までを、その日いちばんの見どころに。
10時には宿に戻って朝風呂。
11時にチェックアウトし、涼しいうちに帰路へ。
持ち物は、薄手の羽織もの1枚、水筒、帽子、そして塩あめ。
標高が上がると、朝晩は思いのほか冷えます。
水分は「のどが渇く前に、1時間にコップ1杯」を目安に。
「事前に調べて行きたい所を決めておくと充実した旅行になる」
というお声のとおり、この季節ばかりは、行き当たりばったりよりも、下調べが効きます。
今年の夏はまず1泊から
具体的な提案を、ひとつ。
今週、地図アプリを開いて、家から2時間以内で行ける「標高800m以上」の場所を3つ書き出してみてください。
そのうち一つに、平日の一泊を予約する。
混雑も、料金も、平日はぐっと下がります。
6℃低い場所へひと晩だけ
遠くまで行かなくていい。長く滞在しなくていい。
ただ、6℃低い場所で朝の空気を吸って帰ってくる。
それだけで、夏の記憶が、がまんではなく楽しみに変わります。
<参照>
総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」(搬送人員、年齢区分、発生場所) https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/r7/heatstroke_nenpou_r7.pdf
総務省消防庁「熱中症情報」
https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/
環境省「熱中症予防情報サイト」(暑さ指数、予防行動)
https://www.wbgt.env.go.jp/
「旅行に関する読者アンケート」(読者の声)




