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美術館は3点だけ見て帰る。それでも満ち足りる鑑賞法

 美術館に行くと、なんだか疲れてしまう。
——そんな声を、よく聞きます。

理由ははっきりしています。
最初から順番に、全部見ようとするからです。

入口の解説を丁寧に読み、1点目から気合いを入れ、中盤で息切れし、後半は流し見。
そして「よくわからなかった」と思って帰る。もったいない話です。

文化庁の調査によると、この1年間に外出して鑑賞した文化芸術のジャンルとして、「美術」は大人世代でとくに上位に入っています。

つまり、私たちの世代は、いちばん美術を楽しんでいる世代でもあるのです。
だったら、もっと気楽に、もっと自分のペースで。

作法1:平日の午前は開館すぐを狙う

 まずは物理的な話から。混雑は、鑑賞の敵です。

いちばんすいているのは、平日の開館直後(10時前後)
次が、閉館の1時間半前
土日の午後は、どの館もいちばん混みます。

さらにひとつ、玄人めいた技を。
会場を、あえて逆回りに歩く。
多くの人は入口から順路どおりに進むので、最後の部屋から見ていくと、人の流れとぶつからず、驚くほど静かに見られます(順路が一方通行の館もあるので、係の方に一言確認を)。

作法2:「3点だけ」と決めて入る

 ここがいちばん大事なところです。
全部見る、をやめましょう。

入口で、自分にこう言い聞かせてください。
「今日は、好きなものを3点だけ見つけて帰る」。

会場に入ったら、まずは早足で一周します。
解説は読みません。ただ歩いて、足が止まった絵の前で立ち止まる
その3点が、今日のあなたの作品です。

そして、その3点だけ、じっくり見る。
近づいて、離れて、また近づく。
筆の跡、絵の具の厚み、キャンバスの目。
近くで見ないとわからないものが、必ずあります。

作法3:解説は「見たあと」に読む

 順番を、ひっくり返します。
先に絵を見て、あとから解説を読む。

先に解説を読むと、「そう見なければいけない」という気持ちが働いて、自分の感覚が育ちません。
まず自分の目で見て、「なんだか好きだな」と思ってから、答え合わせのように解説を読む。
このほうが、記憶にも残ります。

「知識より感覚で」というのは、決して手抜きではありません。
あなたがこれまでの人生で見てきたものすべてが、その感覚のもとになっています。

「文化芸術の鑑賞は、心の豊かさにつながる」
——多くの人がそう答えるのは、正解を当てたからではなく、心が動いたからでしょう。

作法4:帰り道に一言だけ書く

 美術館を出たら、カフェでも駅のベンチでもいいので、スマホのメモに一言だけ残してください。

「青がすごかった」
「この絵、玄関に飾りたい」
「なんか泣きそうになった」

うまい感想でなくて、まったく構いません。

この一言が積み重なると、自分の好みの輪郭が見えてきます。
半年後には、「私はどうやら、静かな絵が好きらしい」と気づく。
そこから、次に行く展覧会が選べるようになります。

3点でいい。それがあなたの展覧会

来週の平日、午前10時。近くの美術館へ、3点だけ見に行きませんか。
帰りにお茶を一杯。それで、もう十分に満ち足りた一日です。

<参照>
「趣味・推し活に関する読者アンケート」(読者の声)
文化庁「文化に関する世論調査 報告書(令和6年3月)」(鑑賞したジャンル、年代別の鑑賞状況、鑑賞しない理由) https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/pdf/94109101_01.pdf
文化庁「文化に関する世論調査の結果について」
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/bunka_yoronchosa.html

キラビュー編集部

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